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「男は…」「女は…]という一般論 [学問・研究]

 今回の教育人間学の講義では、独自の切り口から「ジェンダー」の問題に切り込んでみた。あえて、主流のジェンダー論とは距離を置いた見地から。
 ポイントは、男女いずれについても、「男は…」「女は…」と、なぜこうも一般化が簡単になされるのか、ということだ。
 すでに受講生たちからも事例を集めてもらっているが、世の中にはおびただしい数の「男は…」「女は…」式一般論が出回っている。『話を聞かない男、地図を読めない女』「男は外見でしか女を見ない」「男は女を支えてやるもの」「女の人ってよく愚痴をいいがち」「女は追いかけられる存在であるべき」などなど。
 酒の席その他でもしばしば話題になる。また、たった一人の異性のケースから、即「男って…」「女って…」と拡大解釈するパターンもいろいろだ。たまたま化粧品に多額のお金をかける妻をもって「女はどうしてこうも外見を気にする生き物なのか」とぼやく男性とか、たった一人の男性に裏切られただけで「男って信用できない」と嘆く女性とか…。
 私自身の過去の経験だと、ある女性の友人から「男の人って独りの時間を大事にするんですね」と言われて物凄く違和感を持ったのを覚えている。私自身はまさにその通りだが、独りの時間を大事にしたい女性なんていっぱい知っているし、逆に群れたがる男性も多い。当の女性が独りでいることを好まないがゆえに、私の立場との違いが、「男女の違い」として拡大解釈されたようなのだ。
 逆に、自分のことで主張する場合、しばしば「男は仕事に命を賭けてるんだ」とか「女は一人じゃ耐えられないの」とか、自分の性全般の立場のように語ることも多くのケース。実際には、こういうケースの圧倒的多数は、「俺は…」「私は…」と翻訳して聞いたほうが、まず当たっている。
 ちょっとした個々人の違いが、すぐさま性差全般の問題に拡大されてしまうのだ。
 その結果、一人ひとりの違いが見られない。何より問題なのが、女も男もそれぞれ十人十色であるはずなのに、二分法で十把ひとからげに扱われ、個としての立場が顧みられないということだ。
 「男と女は別の生き物」式の言説は『話を聞かない男…』をはじめよく聞くが、それでは男同士、女同士は同じ生き物と言い切れるのか。同性なら完璧に理解できるというのか。この点が、あまり指摘されないが実は決定的に見落とされた点だ。
 私個人でも「男心がわからない男」「女心がわからない女」は結構知っている(かく言う当人も含めて)。
 そんなわけで今回の授業では、すでに集めてもらった諸般の「男は…」「女は…」式の一般論を事例に、受講生の間でグループワークを行い、それぞれ、自分や他の同性にどれほどあてはまると思うか、いろいろと語り合う機会を設けた。
 もちろん、「その通りだと思う」という意見も少なくなかったが、「自分は違う」「本当に誰も彼もそうなのか?」という意見も、いろいろと出てきた。
 「男はプライドの生き物」―同意する男子学生も多かったが、「プライドの高い女性」も少なくないことも。
 「過去の恋を男は名前をつけて保存、女は上書き保存」―最近しばしば聞かれる、ほとんど格言になっているフレーズで、納得する意見も男女とも多かったが、「個人的にはあてはまらない」という声もちらほら。
 「男は手料理に弱い」―逆もまた然りでは、という声まで。最近は料理する男子も増加しているからか。
 「女性は男性に比べて論理的でない」―これは許しがたい、という意見は女子学生の間から。実際、いろいろな期末レポートなどを採点していても、こういう決めつけがいかに現実に合わないかはよく承知だ。
 女性雑誌のいわゆる「モテ特集」、いかにも「男性が好む」かのように書いてあるが、実際は女性目線で、雑誌に書いてあるように必ずしも男性が思っているわけではない、との声も(女性誌・男性誌それぞれの「モテ特集」―量的には前者が圧倒的に多いが―が実際にどこまで通用するのかを、それぞれ異性に判定してもらう、という機会を設けてみても面白いかもしれない)。
 「ロマンチスト」「子どもっぽい」など、男女とも、相手の性に対して言い合っているようで面白い。
 中には、「男は…」「女は…」の一般論で、相互に矛盾している例もあったりする。
 などとこんな具合、「男女差といいながら、実はかなり個人差が大きい」ということを、いろいろな事例に照らしてみるとますます見えてくると思う。それが、今回のワークショップの意味でもある。大事な点だと思うが、その気づきには、方法と言うのもあると思う。
 もちろん、男女の違いというのも一人ひとりを形づくる重要な違いだが、違いは性差だけではない。その点に立ち入っていくためにも、今回の話を導入した。

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